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導入事例(大学・短大編)

大学・短大向け

 

大学では“コンピテンシー”としての英語力習得を(大妻女子大学)
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明治41(1908)年に大妻コタカが開設した女子のための裁縫・手芸の私塾に起源を持つ大妻女子大学。「恥を知れ」を校訓に掲げ、「高い知性と豊かな情操を有する女性」の育成を目的に大学教育を展開してきた。英語教育においては、英語教育研究所を設置し、英語教育の理論と実践研究と共に、学生の英語学習のサポートを行っている。大妻女子大学の英語教育ならびにCASECの活用状況について、大妻女子大学英語教育研究所所長・教授の服部孝彦博士にお話を伺った。

(写真) 英語教育研究所所長・教授 服部孝彦博士

英語学習を通して、考える力を習得する

 「これからの時代は、“スキル”ではなく“コンピテンシー”として、英語力を身に付ける必要がある」というのが、服部先生の主張だ。コンピテンシーとは、「これからの時代を生き抜くための力」のこと。OECD(経済協力開発機構)や欧州評議会、アメリカの21世紀型スキルなど、教育の世界的な潮流において、カギとなる概念だ。

 「VUCA(※1)の時代に突入し、20数年後にはAIが人間の能力を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が起こると言われています。学生が社会に出て活躍する頃には、今ある仕事の約半分がなくなり、今はまだない仕事が次々と生まれているはずです。自動翻訳機もさらに発達し、スキルとしての語学力は、以前のように大切なものではなくなるでしょう。そうした状況の中で人間に求められるのは、課題発見・解決力です。そして、課題を発見・解決するためには、クリティカルシンキングとクリエイティブシンキングが不可欠です。学生には語学学習を通してこうした力を身に付けてほしいと考え、高次思考力を習得することを英語教育のコンセプトに据えています」

 このような考え方は世界的に広がっており、OECDが発表したラーニング・コンパス(学びの羅針盤)や文部科学省が策定・実施する学習指導要領にも反映されている。また、近年は大学の入試問題でも、「正解のない課題について考え、考えたことを論理的に表現する」という力が求められるようになってきている。しかし、「学習者が主体的に学び合うアクティブ・ラーニングになっていない授業が散見される」と服部先生。「もちろん、知識・技能は大事。でも、それをインプットするだけでは不十分。能動的に自分の頭で考えることをしないと、21世紀を生き抜く力を身に付けることはできない」と強調する。

※1 VUCA(ブーカ)=Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉。変化が激しく不確実かつ複雑で、曖昧さを含む社会情勢を表す。

パフォーマンス重視の授業を展開

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 服部先生が担当する授業では、学生に問いを投げかけて考えさせるシーン、学生同士で意見を交わしたり発表したりするアクティブなシーンが中心だ。例えば、「行ってみたい国について、そこへ行きたい理由を3つ挙げながら、隣の人と話してみよう」など、学生にとって身近なテーマを取り上げつつ、論理的に考え、表現できるよう導いている。

 「授業づくりで大事にしているのが、3つのC、Challenge、Curiosity、Controlです。チャレンジングになりすぎず、また易しすぎず、学生にとって最適なレベルになるように課題を設け、学生に興味・関心を持ってもらえるテーマを選び、表現する内容は全て学生にコントロールさせる、ということです。学生の探究心を刺激し、授業が終わったときに、もうちょっと調べてみようかな、と思ってもらえるような授業を目指しています」

 評価については、いわゆるパフォーマンスを重視しており、服部先生が策定に関わった国連英検のスピーキングテストのルーブリック(評価基準表)をアレンジして活用している。

 「知識や技能といったスキルを測る上でペーパーテストも行いますが、ペーパーテストにはどうしても限界があります。積極性、主体性、意欲、チャレンジ精神、探究心など、ペーパーテストでは測れない非認知能力も評価したいのです。なぜなら、こうした能力こそが、コンピテンシーを形成するから。パフォーマンスの評価は一般的に難しいとされていますが、私が作成したルーブリックは観点別に10段階の習熟度に分けており、かなり信頼できるものになっていると自負しています」

IRT(項目応答理論)に基づいた信頼性の高さがCASEC導入の決め手に

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講義する服部孝彦先生

 大妻女子大学では、1学部を除き、全学共通科目「英語」において習熟度別にクラスを編成している。新入生のプレースメントテストとして多くの学部(短期大学部を含む)で採用しているのが、CASECだ。複数のテストを検討した結果、CASECを選んだ理由について、服部先生はこう述べる。

 「項目応答理論に基づいた信頼性の高いテスト(※2)であることが、決め手になりました。テスト理論の専門家が多数いなければ構築できない仕組みなので、教育測定研究所(JIEM)はしっかりとしたテスト開発を行っている会社なのだと好感が持てたのも大きかったですね。CASECでは項目応答理論により、学生一人一人の能力に合った問題が出題されるので、40分〜50分と比較的短時間で正確な結果が出ます。学生の負担も少なく、受けやすいテストだと感じます」

 新入生は入学前の3月に、自宅からパソコンでCASECを受験する。その結果を大学側は、習熟度別クラスのプレイスメントや、教材や授業内容を考える際の指標として活用している。加えて、学生にとっても英語力の可視化や弱点把握に役立つと、服部先生は言う。

 「CASECのもう一つの目的は、学生に今まで受けてきた英語教育の成果を知ってもらうことにあります。テスト終了後すぐにパソコンの画面にスコアが表示されるのでタイムラグがなく、CASECのスコアと同時にTOEIC® L&RとTOEFL iBT®のスコア目安、英検®級の目安も表示されるので、学生にとっても自分の英語力を把握しやすくなっています。学生たちには、結果が出たら終わりではなく、語彙が弱い、リスニングが弱いなど自分に不足している部分を把握し、スコア別のアドバイスに目を通して弱点補強に役立ててほしいと伝えています」

※2 CASECは、日本初のIRT(項目応答理論)に基づいたCAT(コンピュータ適応型テスト」として開発された、英語コミュニケーション能力判定テスト。問題をランダムに出題するのではなく、受験者の解答の正解・不正解によって次の問題の難易度を変化させていくことで、従来のペーパーテストに比べて短時間で正確な能力測定が可能になっている。

CASECのスコアデータを入学者動向分析に活用

 通常、CASECは新入生のプレイスメントのみに使用しているが、研究目的のために、一部の学生に1年後に受験をさせたことがある。そのときの結果について、服部先生は次のように分析する。

 「入学前と1年後のCASECのスコアを比較すると、明らかに伸びていました。ただ、この結果を見て『大学の授業を受けたことで英語力が伸びた』と結論づけるのは尚早です。CASECでは4技能のうちリスニングとリーディングの力を正確に測定しますが、残念ながらパフォーマンスは評価できません。とはいえ、大学英語教育の一定の成果があったことは見て取れるので、今後も継続的にCASECのスコアの推移を追っていきたいと考えています」

 CASEC導入から6年余りが経ち、新入生のスコアデータも蓄積されてきた。一般入試や推薦入試といった大学の入試形式が多様になる中、「入学者の経年変化や、どのような入試形式で入った学生がどれくらいの英語力があるかを把握するのにもCASECは役立っている」と服部先生。そして、「全体として、入学者のレベルが上がってきていると感じる」と言う。

 「感覚的に、近年は英語の基礎力が高い学生が増えてきたな…と感じていたのですが、実際にCASECのスコアを見て確証が得られました。いわゆるスキルとしての英語のレベルは上がっているということなので、大学でそれをいかに使いこなせるようにするか、つまり、いかにしてコンピテンシーの育成に結びつけるかに、今後も挑戦していきたいと考えています」

 テスト理論に明るく、IRT(項目応答理論)に基づいたCAT(コンピュータ適応型テスト)のCASECに厚い信頼を寄せる服部先生。「パフォーマンス評価とペーパーテストをはじめとする伝統的な評価を両輪で回すためにも、今後もさらに良いテストを開発してほしい」と締めくくった。

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2020年春に完成した多摩キャンパスのラウンジ「FOREST CAFE」で勉強する学生たち

※英検®は、公益財団法人日本英語検定協会の登録商標です。このコンテンツは、公益財団法人日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。
※感染対策を十分に講じた上で取材・撮影しています。

CASEC EYE (キャセック・アイ)
2022 Autumn vol.54

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