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楽天株式会社は、2010年4月頃より2年後を目途とした社内公用語の英語化に取り組み始めました。社員の英語力向上に取り組むため、楽天では2010年7月から10か月間CASECを利用し、基準点をクリアしていない対象社員には月1回以上の受験を課してきました。楽天の取り組みについて、社内の英語化を推進する人事部の葛城崇さん、採用育成部の藤本直樹さん、ECBU総務管理部の井上悠さん(ECBUは社内最大規模事業「楽天市場」の所属事業部)に、お話をうかがいました。 写真: (左から順に)採用育成部 藤本直樹さん |
――楽天の「英語社内公用語化宣言」は、世間をあっと驚かせましたが、この決断の背景にはどのようなお考えがあったのでしょうか。
葛城 「まず、楽天が会社として掲げるミッションとして『世界一のインターネット・サービス企業になる』ということがあります。それを実現するためには、ずっと日本国内にとどまっていてはいけないし、世界に打って出るためには絶対に英語が必要だという認識がありました。具体的に、なぜ英語が必要なのか、どんな場面で英語が必要かと言うと次の3つが挙げられます。
1つ目は、国籍を問わず優秀な人材を採用するため。日本人以外でも、能力があればどんどん採用していくということです。
2つ目は、海外の楽天グループ会社と、時間のロスなくコミュニケーションをはかるため。例えば、日本で成功しているネット店舗のノウハウを海外のEC事業でも応用しようとした場合、説明するのに日本語から英語へ、英語からさらにさまざまな現地語へと通訳したり、あるいは資料を各国の現地語に翻訳したりしているとどうしても時間がかかってしまう。そこをスムーズにしたい。
3つ目は、インターネット技術に関する最新情報をリアルタイムで取り込むため。インターネットはアメリカ発の技術ですから、最新情報は多くの場合、英語で入ってきます」
――3つ目に関してですが、「技術に関する最新情報は、専門の部署が収集し、その後必要な部署に周知していく」という方法ではいけないのでしょうか。
葛城 「それでは、ビジネスの競争スピードに遅れをとってしまいます。楽天では、『情報の共有化』ということを重視しており、インターネット技術に関する情報も、当然全社員で共有すべきだと考え、毎週月曜日におこなっている全社員参加の『朝会』でも、必要な情報は共有されています。ここには海外グループ社員も中継等で参加しており、昨年4月からはすべて英語でおこなっています。しかし、一方で各自でも最新の情報にキャッチアップできないと、全社的な競争力の底上げにはなりません。また、逆に情報を発信するという場合にも、英語で発信した方が海外への伝播力が高いといえます」
――社内の英語公用語化は、具体的にどのようなステップを踏んで取り組まれてきましたか。
葛城 「まず、組織としての英語公用語化、社員個人の英語力アップの2つに分けてプロジェクトを進めてきました。前者はさらに、会議、文書、社内コミュニケーションの3つの分野に分けて考え、そのすべてで英語を使用していくことを目指しています。
会議について言うと、先ほど述べた朝会をはじめ、すでに役員会議、経営会議などは英語でおこなっています。それから、社内資料も段階的に英語化しています。一度に全部変えるのは無理なので、昨年春から徐々に取り組み、どの過程にいるのかがわかるように、部署ごとに会議、文書、社内コミュニケーションの3つの分野の英語化進捗状況の『見える化』を心がけています」
――目標と比べると、現在、何割くらいの到達度だとお考えですか。
藤本 「そうですね、究極的に目指している目標から厳しくみれば、仕事で英語を駆使し使いこなしているといえる社員は、まだ2割くらいかもしれませんね。ただ、英語での朝会の報告を聞くということで言えば、6〜7割方できていると思います」
井上 「特に英語初級レベルの社員には、『まずTOEIC(R)テストで600点をとろう』ということを言っているんです。そこまで行けば、英語の会議に参加しても、聞くほうは何とかなりますからね。発言はまだ難しいかもしれませんが」
葛城 「楽天の英語公用語化は、なにも『全員ネイティブ・スピーカー並みにしゃべれるようになれ』ということではないのです。海外事業などにおける交渉事など高度な英語力が求められる業務については、それなりの人材を配置していますが、楽天の英語公用語化は、第一義的にはグローバルに散らばる社員同士が情報やノウハウを共有するためのものなので『細かい文法ミスはさほど気にしなくていい。片言でもいい。とにかく英語を使うこと、伝えようという姿勢が大切なんだ』ということを弊社社長の三木谷も常々言っています。英語公用語化という施策は、その姿勢を身につけるためという部分も大きいですね」
――CASECをどのようにお使いいただいているか具体的にお聞かせください。
藤本 「2010年7月に全社員のレベルチェックとして初めて利用しました。その後、2010年11月から2011年4月末まで、毎月最低1回ずつ、対象となる社員に受けてもらっています。CASECを使うことに決めたのは、定期的に英語力を測る機会を設けることで、社員に自分の英語力に向き合ってもらおうと思ったからです。会社が社員の英語力アップを助けるためにできることは、ほかにもいろいろあり、わが社でも、社内で英会話スクールに通えるようにしたり、効果的な英語学習法の社内セミナーや英語力向上のためのEラーニングもおこなったりしています。CASECは比較的短時間で受験でき、点数もすぐに分かるので、受験頻度を増やし、定期的な自己啓発の場を作るのに効果的なテストだと考えました。毎月少なくとも1回、役員、社員、内定者まで、必要に応じ何度でも受験することができ、その結果を朝会で公表しています。部署ごとに平均点数を発表し、部署間の競争を促しているんですよ。トップ5もワースト5も発表します。シビアに聞こえるかもしれませんが、英語学習にゲーム的な要素を加えることで、みんなのやる気をアップさせる狙いがあります」
葛城 「CASECは、新卒採用や中途採用にも利用しています。社員の中には、自ら希望して月1回以上の回数を受けている者が半数以上もいます。CASECの点数を大きく伸ばした社員がいれば、どんなふうに時間を使ってどんな勉強をしたのかを聞き取って、その経験を社内報に載せ、社員全員で共有するようにもしています」
――社員の皆様の英語力の伸びはいかがでしょうか。
葛城 「わが社はもともと学習意欲が高い社員が多く、CASECのおかげもあって『英語をやろう』という社内風土ができてきたと感じています。英語の勉強を積極的にやっている社員の成長ラインは、正直、思い描いていたよりもずっと上ですね」
――英語力を大きく伸ばした方には、どのような特長がありますか。
葛城 「TOEIC(R)テストのスコアに換算して、2〜3か月で200〜300点程度伸びた社員もいます。そういうふうに短期間で大きな成果を上げる社員には、私は3つの特長があると思います。
1つ目は、すきま時間の使い方がうまいこと。電車の中や昼休みの短い時間を使って勉強していますね。今はiPhoneとか、英語学習に使えるツールが充実していますから。実力を上げた社員は、そういうツールをうまく活用しています。
2つ目は、やると決めたら徹底的にやる意志の力と集中力。ある新入社員は、テレビのコンセントを引き抜き、絶対にテレビを見られないようにして勉強していると言っていました。
3つ目は、上司がお手本になっていること。部門長の英語力が伸びている部署は、部下も皆伸びているのですよ。わが社では、役員も対象者は全員CASECを毎月受けているのですが、役員の英語力の伸びも非常に目覚ましいです。これもやはり、役員が自分の役割や責任を意識しているからだと思います」
藤本 「それと、『昇格につながる』ということを意識すると、英語力の伸びは早いですね。わが社では、2010年12月から、英語力と昇格要件を本格的に連動させました。当然、総合的な能力を見るので英語だけできても昇進できるわけではありませんが、昇格要件に応じた英語力をクリアしないと、昇格できないというのも事実です。そのことを実感し危機感を感じて、年明けから本格的に英語の勉強に取り組み出した社員もいます」
葛城 「よく、『英語ができても仕事ができるとは限らない』という言い方がなされますが、帰国子女などを除き、勉強によって修得されるような場合、私はこの2つの能力は共通していると思います。仕事ができる人は、英語の勉強についても鼻が利くようです。どこをどう勉強すれば、能力アップにつながるか探し当てるのがうまい」
井上 「そうですね。『来月のテストまでに何点とらないといけない。現状では何点足りない。自分の弱点はリーディング。そのためには毎日これをこれだけやる』というように、現状と目標を分析しそのために必要なことを洗い出し、確実に実行していく。これって、仕事の能力と同じですよね」
藤本 「それと、傾向としてですが、例えば大学受験などにおいて、志望大学を決め、自分が足りない部分を分析し、それを補うために一生懸命勉強してきた体験をしたことがある人は、勉強の仕方もよく知っていて、仕事でも英語の勉強でも強いですね」
――今のところはまだ日本国内の事業の売上や利益のほうが多いと思われますが、「英語が必要になってから」ではなく、いま英語社内公用語化を推進する意義というのはどのようなところにあるとお思いになられますか。
葛城 「日本企業と英語ということで言うと、『ある日突然、英語が必要になる』というパターンが多いと思います。しかし、その『ある日』が来てから慌てて英語を勉強していては間に合わないのです。ビジネスでもそうですが、ある程度予想されることであればなおさら事前に準備しできるようになっておく必要があります。今まではその『ある日』は、なかなかやって来なかったし、多くの日本企業に勤める人達も『まあ、来ないだろう』と思い込んでいたわけです。しかし、今の日本を取り囲む情勢を考えると、その日はかなりの確率で、しかも思ったよりずっと早くやって来るだろうと思われます」
――この『CASEC EYE』は全国の大学、高校の先生方にもお配りしていますが、学校での英語教育について、何かお感じになっていることはありますか。
葛城 「企業人として感じている危機意識を先生方や学生さんと共有したいという気持ちが強くあります。危機意識と言っても、いい意味での危機意識です。『これからの時代は、英語が必要だ。日本企業でもある日突然、英語が必要になる』という現状認識を、学校で教育に携わっている先生方や学生さんともシェアしたい。はっきり言って、企業に入ってから英語をやっていては遅いと感じています。突然英語が必要になる『ある日』のために、学生時代から英語をできるようになっておかなければならない。そういう意識を、学生さんたちにも持っていただければ、と願っています」
CASEC EYE (キャセック・アイ)
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